おとめ座 (Virgo)
麦の穂を持つ女神の星座、黄道十二星座の一員
おとめ座とは
おとめ座は、黄道十二星座の一つであり、トレミーによって記録された48星座の一員です。全天で2番目に大きな星座であるにもかかわらず、その事実はあまり知られていません。
星座の形は麦の穂を持つ女神を象徴しており、最も明るい星であるα星「スピカ(角宿一)」は、女神が持つ麦の穂の先端を表しています。この青白く輝く1等星は、牧夫座のアークトゥルスとともに「春の夫婦星」として知られています。
西洋占星術では8月23日から9月22日生まれを乙女座としています。天文学的には、現在秋分点がこの星座内に位置するなど、重要な意味を持っています。
星座面積比較(上位5位)
おとめ座の神話
収穫の神デメテル
ギリシャ神話において、おとめ座は収穫の神デメテルを象徴しています。デメテルはゼウスの姉で、その娘ペルセポネは冥府の神ハーデースに誘拐されました。
娘を失ったデメテルは悲しみに暮れ、ほら穴に隠れるようになりました。その間、大地は荒れ果て、作物は枯れ、人々は飢えに苦しみました。
ゼウスはこの惨状を憂い、ハーデースにペルセポネを返すよう命じました。しかし、ペルセポネは冥府でざくろの実を食べていたため、一年のうち4ヶ月は冥府に滞在しなければなりませんでした。
その4ヶ月間、デメテルは再び悲しみに暮れ、大地は冬となります。これが四季の循環の始まりとされています。
星図と主な天体
おとめ座の星図
女神の姿を表すおとめ座の主要な星々とその連なり
主要な星々
スピカ(α星)
青白く輝く1等星で、おとめ座で最も明るい星。女神が持つ麦の穂の先端を象徴する。距離は約250光年。
ザヴィヤヴァ(β星)
3等星で、「乙女の枝」を意味する名前が付けられている。距離は約35光年。
ポリマ(γ星)
3等星で、「乙女の手」を意味する。二重星であり、望遠鏡で観察すると2つの星に見える。
有名な深空天体
ソンブレロ銀河
名前の通り帽子のような形をした銀河。直径約5万光年、距離は約2800万光年。
M49楕円銀河
おとめ座銀河団の一員で最も明るい銀河の一つ。距離は約5600万光年。
おとめ座銀河団
約2000個の銀河が集まった巨大な銀河団。地球からの距離は約5500万光年。
おとめ座の観測方法
見ごろの時期
おとめ座は春から夏にかけて観測するのが最適です。以下の時期に南の空約60°の高さまで上がり、最も見やすくなります。
午前0時頃、南の空約60°の高さ
午後10時頃、南の空約60°の高さ
午後8時頃、南の空約60°の高さ
位置確認のコツ
北斗七星の柄から延びる線を使って簡単に見つけることができます。北斗七星の柄の最後の星から、牧夫座のアークトゥルスを通り越して延長すると、青白く輝くスピカ(おとめ座α星)が見つかります。
誕生日におとめ座は見えるか?
占星術で乙女座とされる8月23日から9月22日生まれの人々は、誕生月におとめ座を見るのは難しい場合が多いです。この時期、おとめ座は太陽とほぼ同じ方向に位置するため、昼間に昇ってしまうからです。
しかし、実際の星座位置と誕生星座の間にはずれがあるため、日没後1時間程度は西の低空におとめ座を確認することができる場合があります。望遠鏡を使うと、明るい星だけでなく周辺の深空天体も観察できます。
おとめ座の基本データ
項目 | 詳細 |
---|---|
和名 | おとめ座(乙女座) |
学名 | Virgo |
略符 | Vir |
設定者 | プトレマイオス(トレミー) |
概略位置 | 赤経:13h20m0s,赤緯:-2° |
面積 | 1,294.428平方度(全天2位) |
20時正中 | 6月6日ごろ |
主な季節 | 春 |
肉眼可視星数 | 約170個 |
星等分布
星等とは?
星等とは星の明るさを表す指標で、数値が小さいほど明るい星を示します。1等星は非常に明るく、肉眼で容易に確認できます。6等星は肉眼で確認できる限界の明るさです。 おとめ座には1等星1個を含め、多くの明るい星が存在するため、比較的容易に識別することができます。